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シャトー・ルノーという男

こんにちは、團テス子です。
さて本日はシャトー・ルノーについての考察です。

アルベールの友人であるラウール・ド・シャトー・ルノー。
ハシッシュ体験をするわけでもなし、山賊に誘拐された能天気な友人を救うために奔走する
わけでもなし、ダングラール夫人と不倫するわけでも、友人の父親の過去の真相を確認するため
二週間かけてジャニナまでわざわざ赴くわけでもない。
アルベールと親しくしている4人の友人たちの中では一番セリフや出番が少ない彼。
他3人のように物語に密接に絡んでくる役柄ではないですし、テス子も当初は「ほぼモブ扱い」
的な脇役の一人と捉えてましたし、甚だ印象の薄いキャラでありました。
しかし何度か読み直すうちにその考えはだんだんと改まっていきました。
前置きがかなり長くなりましたがシャトー・ルノーとはどんな人物なのか。
さあ、それでは考察してみましょう。

彼の初登場は第三巻。
パリに初めてやってきたモンテ・クリスト伯の訪問を待つアルベールが、伯爵に引き合わそうと
自分の親しい友人達も午餐に招いていたのでした。シャトー・ルノーはその中の一人です。

  そういう言葉が終るか終らないうちに、頭から足の先まで紳士であり、ギーシュのような容貌
 とモルトマールのような才知を備えた三十ばかりのりっぱな青年、ド・シャトー・ルノーが、早くも
 アルベールの手を握っていた。

ドブレーのように髪の色や目の色など詳細に書かれてはいませんが「ギーシュのような容貌」という
表現がヒントですね。
ギーシュって誰? モルトマールって誰? と疑問に思ったテス子。
調べてみましたがよく分かりませんでした。が、ひょっとしたらと思うものがひとつ。
まずギーシュは、同じくデュマ作の小説「ダルタニャン物語」にギーシュ伯爵というのが
出てきます。
(ギーシュ伯爵というキャラに関してはこちらのページをご参考ください。)
つまりこれでいくと「ギーシュのような」というのは貴族の男としては最上の褒め言葉。
気品に溢れた美男子というわけですね。
彼の印象の薄さのせいで「え、シャトー・ルノーって男前だったの?」と思われる方が
ほとんどじゃないですか?
実際のところこのギーシュで合ってるのか分かりません。でも面倒臭いのでこの際そういう
ことにしておきましょうよ。
(モルトマールは分かりませんでした。これももしご存知の方がありましたら拍手コメントから
ぜひご一報ください。)
この場でシャトー・ルノーはアルベールに、アフリカでの自分の命の恩人、そして親友として
あのマクシミリヤン・モレルを紹介します。
この小説における彼の重要な役割と言えばこれ位かもしれません。
…と言い切ってしまうとちょっと気の毒でしょうか。ごめんなさい。


約束通りに現れたモンテ・クリスト伯爵に、アルベールはシャトー・ルノーのことを
このように紹介しています。

  「これは、その家系に十二人の貴族を数え、祖先は円卓に列したことのあるというド・シャトー・
 ルノー男爵。」

これってシャトー・ルノーが十三代目という意味でしょうか?
もしもそうなら十三代も続いてる家系って相当古いですよね。アルベールは言外にそういうことが
言いたかったのかな。
デュマ先生の書く表現や台詞は時々奥が深すぎて、教養不足かつ脳みそが猫並の軽さしかない
テス子は本気で困ってしまいます。
彼に関しては、祖先が昔キリストの墓を救いに行っただとか(アルベール談)、以前ピストル決闘を
したことがあり、それにフランツも関わっていたとか(本人談)、わたくしとしてはとても気になる
キーワードなのですが省略いたします。
とにかく由緒正しき貴族であり、紳士であり、頭もよく、しかもグッド・ルッキング・ガイな
シャトー・ルノー。影の薄いチョイ役なのにこの無駄な完璧っぷり、どうですか!
さぞやパーティなどでもご婦人方に持て囃されていることでしょう。


さて、わたくしがこのキャラを「興味深い人だ」と思ったのはまずあの名言からです。
え? どの名言って? あれですよあれ。

「ディアーヌ・シャスレッス(猟をする月の女神ディアナ)型の花嫁」

四巻で、男勝りの手強い美人ユージェニーとの結婚を嫌がるアルベールに向かって「一体何が
不満なんだ、まったく最近の若いモンはけしからん」と説教するシャトー・ルノーの口から
出た表現なのですが、あのユージェニーをこのように的確に、そしてちょっと詩的に表現してしまう
シャトー・ルノーという青年、やはりなかなかの人物だと思いませんか。

次。一気にラストの七巻まで飛んでしまいますが、アンドレア(ベネデット)の裁判を傍聴するために
集まったボーシャン、ドブレー、シャトー・ルノー達が、夫の晴れ舞台のはずなのになぜか
その場に現れないヴィルフォール夫人のことを語り合うシーン。

  「気の毒な人さ!」と、ドブレーが言った。「おそらくほうぼうの病院のためといって、メリッス水
 をこしらえたり、自分や友だちのためといって、コスメチックでもつくっているにちがいないのさ。
 噂によれば、ああした種類の道楽に、年に二三千エキュもつかっているということだ。だが、たし
 かに君の言うとおりだ。どうしてやってこないのかな? ここで会えたらうれしいんだが。僕はあの
 ひとが大好きでね。」
  「ところが、」と、シャトー・ルノーが言った。「僕はあの人が大きらいだ。」
  「どうして?」
  「そこのところはわからないがね。どうして好きか? どうしてきらいか? どうも虫が好かない
 んだな。」


なんとなんと大きらい、ですよ。
30にもなろうという大のおとなが、りっぱな紳士であるところのシャトー・ルノーが、いくら親しい
友人相手だからとはいえ、女性に対して「大きらい」とここまではっきり自分の感情をストレートに
口にするなんてちょっと意外でしたね。
やはりエロイーズの恐ろしい本質を見抜いてたんでしょうか。
シャトー・ルノー、恐ろしい子!
…失礼しました。とにかく、テス子はここの会話を読みまして彼のことを見直した訳で
ございます。で、遡ってもう一度小説を読み直してみましたら、さすがデュマ先生、彼の
この鋭い性質を三巻できちんと描写されてました。

  「まったくだ、」多くの人々に接し、人を見る目を持っているシャトー・ルノーは、モンテ・クリスト伯
 について、うかがいうるかぎりのものをつかんでいた。「まったくアルベールの言った言葉のとおり
 だ。伯爵はふしぎな人物だ。ねえモレルさん、どうお思いです?」

そうした人に対する鋭い目を持っているシャトー・ルノーをもってしても、モンテ・クリスト伯
の全体像を「ふしぎな人」くらいにしか掴めなかったようですが、これはやはり伯爵のほうが
人生経験が豊富であり、人間的にも一枚も二枚も上手、クセモノだったからでしょうか。
伯爵だけに関して言えば、ローマでのフランツ・デピネーのほうが伯爵のことを本質的に見抜いていた
ようですよね。

そんなシャトー・ルノーですが、彼、ピストル以外にも特技があるようです。
同じく三巻、アルベールの口から初めてモンテ・クリスト伯爵という名前を聞いて、

  「モンテ・クリスト伯、そんな名前があるもんか。」と、ドブレーが言った。
  「そうとも。」ヨーロッパの貴族社会のことを、掌を指すように知っているシャトー・ルノーが、落ち
 着き払って合槌をうった。「モンテ・クリスト伯爵なんて人を、誰が知っててたまるものか。」


ヨーロッパ貴族ならほぼ把握してるなんて、お前は美童・グランマニエか。
…またまた失礼いたしました。
それだけ貴族に詳しい彼のことです、果たして後に登場するアンドレア・カヴァルカンティの
正体についてはどう感じたのか興味深いですね。
イタリーの大金持の貴族という触れ込み、ましてや公爵だなんて本気で信じたでしょうか?
「紋章にかけては名犬のように鼻が利く」と七巻で本人が言っているのですから、話半分、いや
話し半分以下くらいで彼の噂を聞いていたのでは。
こいつは何だか怪しいぞ、くらいは思ったかもしれませんが、何しろあの厄介なダングラールの
娘婿になるかもしれない男ですし、あまり係わり合いにはならないほうが吉とばかり、冷めた目で
遠巻きに彼とその取り巻き連中を眺めていたに違いありません。多分。


さて。七巻では、アンドレアの裁判が始まる前の友人たちの会話の中でなかなか
鋭い切り返しをするシャトー・ルノーがちょっと格好良いので、掻い摘んでご紹介しますね。

アンドレアが偽公爵だと分かっていたと言うシャトー・ルノーに、内務大臣秘書官のドブレーが
「でも君以外の者には公爵でちゃんと通用していたよ。何しろ彼(アンドレア)は大臣連中の
所にまで顔を出していたくらいだ」といったような反論をしますと、彼はサラリとこう言います。

  「なるほど。」とシャトー・ルノーが言った。「つまり、大臣がたには、公爵たちのことがよくおわ
 かりというわけなんだな!」

アンドレアを簡単に信じてしまった大臣連の間抜けさを皮肉ってるんですね。
また話がヴィルフォール家で立て続けに起こっている不幸に及ぶと、

  「じっさい、」とドブレーが言った。「僕は三ヶ月以来、喪につつまれたあの家を、いつもこの目
 でじっと見ていた。そして、ついおととい、ヴァランティーヌさんのことで、奥さんからそうした話を
 聞かされたんだ。」
  「奥さんて? ……」と、シャトー・ルノーがたずねた。
  「大臣の奥さんさ!」
  「これは失敬。」と、シャトー・ルノーが言った。「大臣がたのところへなんかおつきあいのない
 僕なんでね。そうしたことは、公爵さまがたにおまかせ申しているわけなのさ。」

この切り返し、好きですねえ。
もしかしてここが唯一のシャトー・ルノーの見せ場かもしれません。

やたら大臣連中を皮肉るシャトー・ルノー、そして内務大臣秘書官であるドブレー。
表面上は友人付き合いをしていますが、政治的な背景で見てみたらこの二人は対立している
立場なのかもしれないと思いました。
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ジャンル : 小説・文学

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